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若い読者のための大江健三郎ワールド 作品紹介 |
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まんえんがんねん 万延元年のフットボール |
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講談社文芸文庫 | ||||||
解説:加藤典洋 | ||||||
定価:1650円(税別) | ||||||
頁:442頁(文庫) | ||||||
ISBN4-06-196014-8 | ||||||
カバーデザイン:菊地信義 | 初出:1967年(昭和42年) 雑誌『群像』1月号掲載 | |||||
「乗越え点として」の作品 最高傑作のひとつ | ||||||
「個人的な体験」から2年4ヶ月。大江健三郎にとっての新たな出発。 やはり一度は読んでおきたい作品。しかし、いきなりこの作品にとりかからないほうがいいのかもしれません。 特に著者も述べている通り、冒頭の『1 死者にみちびかれて』は難解と感じられます。ここでいきなり挫折をして二度と大江作品にふれなくなるひともいるのではないかと思います。有名な作品だけに手にするチャンスも多いかもしれませんが、あわててこの作品に飛びつくことはありません。幸いなことに今入手可能な講談社文芸文庫は1500円と高額なため、いきなりは買わないような気もします。少し大江作品に慣れてから、読み始めて見ましょう。 間違いなく傑作です。わたし個人としては頂点にたつ作品とは思いませんが、水準は突き抜けています。必ず一生に一回は読んでおきましょう。 作品の読みどころは至る所にあるが、まずは登場人物のネーミングがユニーク。主人公は根所蜜三郎(ねどころみつさぶろう)、その弟は根所鷹四(たかし)。そして蜜三郎の共同翻訳家は朱色の塗料で頭と顔をぬりつぶし、素裸のまま肛門にキュウリを差し込んだまま首をくくって自殺をした。冒頭からこの異常さが続く。読み手を突き放すような作者の想像力溢れた世界についてゆかないといけない。初心者にはちょっとしんどい。 しかに読み慣れてくると作者の表現力の圧倒的なパワーを楽しむことができるようになる。 ここでは各章のタイトルだけをあげておきます。これだけでもこの作品はなんなんだろうという驚きを感じることができるのではないでしょうか。 1 死者にみちびかれて 2 一族再会 3 森の力 4 見たり見えたりする一切有は 夢の夢にすぎませぬか (ポー、日夏耿之介訳) 5 スーパー・マーケットの天皇 6 百年後のフットボール 7 念仏踊りの復興 8 本当のことを云おうか (谷川俊太郎『鳥羽』) 9 追放された者の自由 10 想像力の暴動 11 蠅の力。蠅は我々の魂の活動を妨げ、 我々の体を食ひ、 かくして戦ひに打ち勝つ。 (パスカル、由木康訳) 12 絶望のうちにあって死ぬ。諸君はいま でも、この言葉の意味を理解すること ができるであろうか。それは決してた んに死ぬことではない。それは生れで たことを後悔しつつ恥辱と憎悪と恐怖 のうちに死ぬことである、というべき ではなかろうか。 (J=P・サルトル、松浪信三郎訳) 13 再審 |
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<冒頭> | ||||||
1.死者にみちびかれて 夜明けまえの暗闇に眼ざめながら、熱い「期待」の感覚をもとめて、辛い夢の気分の残っている意識を手さぐりする。内臓を燃えあがらせて嚥下されるウイスキーの存在感のように、熱い「期待」の感覚が確実に体の内奥に回復してきているのを、おちつかぬ気持ちで望んでいる手さぐりは、いつまでもむなしいままだ。 |
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<出版社のコピー> | ||||||
友人の死に導かれ夜明けの穴にうずくまる僕。地獄を所有し、 安保闘争で傷ついた鷹四。障害児を出産した菜採子。 苦渋に満ちた登場人物たちが、四国の谷間の村をさして 軽快に出発した。万延元年の村の一揆をなぞるように、 神話の森に暴動が起こる。幕末から現代につなぐ 民衆の心をみごとに形象化し、戦後世代の切実な体験と 希求を結実させた画期的長編。谷崎賞受賞。 |
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<おすすめ度> | ||||||
☆☆☆☆☆ |
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