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■大江健三郎略年譜

    
共同生活
新潮社文庫  
解説:渡辺広士
定価:520円(税別)
頁数:45頁(文庫版)
ISBN4-10-112604-6
カバー画:ウイリアム・ブレイク 初出:1961年 雑誌「文学界」1月号掲載
四匹の猿との共同生活とは
 
 24歳の作品。22歳で華やかにデビューをし、みずみずしい作品を次々と発表をし続けた大江だが、この時期は壁にぶつかったのだろうか、作風が急激に変わってゆく。
 主人公は大学を卒業しある商会調査室に勤めている青年。かれには離れたところに恋人もいる。その商会には労働組合があるが青年は加入していない。労働組合の委員長が月に一度加入のオルグにやってくる。あるとき不景気を理由に人員削減が実施されることになった。そんな青年が不眠症のため睡眠薬を飲み、そこから生まれるちょっとした狂気、妄想。
 初期の頃とは文体も微妙に変化してくる。その過程を味わうことができる作品である。

<冒頭>

 疲れきって蒼ざめた長身の青年が、書類鞄を椅子におき背後の扉をとざす。猿どもが、かれを茶色の輝く虹彩にかこまれた葡萄色の瞳、哀しんでいる人間の眼のようなそれで見つめ始める。青年は再び書類鞄をとりあげそれを机の上におき、こんどは自分の体を椅子におちつける。そしてかれは自分の後頭部、首筋、背、腰、椅子の脚にからんでいる自分の足に、猿どもの熱心な視線がそそぎつづけられるのを感じる。これが、かれの生活だ。これがかれの生活の真の側面だ。

<出版社のコピー>
現代社会の恐るべき孤独感を描いている
<おすすめ度>
  ☆☆☆★

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