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■大江健三郎略年譜

叫び声
講談社文芸文庫  
解説:新井敏記
定価:950円(税別)
頁数:205頁(文庫版)
ISBN4-06-196071-7
カバーデザイン:菊地信義 初出:1962年11月号 『群像』掲載
    叫び声は青春への挽歌か。
同性愛、オナニー、強姦など性的イメージによって描かれた挫折。
 
大学生のまま作家としてスタートした大江健三郎。デビューしてまもなく芥川賞の受賞。次々と発表される鮮烈な作品群。どこにもつまずきなどないと思われる若き作家が抱えていた”難所”の頃の作品。デビュー時の作品とはすでにスタイルが大きく変わってきている。「死者の奢り」からわずかに5年。激しい変貌である。そして名作「個人的な体験」へと引き継がれてゆく時期の作品。この作品を書き終えたことにより大江は自分の難所を乗り切ったと自覚したと語っている。やはり、読まずにはすまされない作品である。
 大江はこう語っている。

 いまふりかえると「個人的な体験」の主人公の青年鳥(バード)のすぐ後ろには「叫び声」の、語り手のみならず、仲間三人の若者たちがそろって立っているとかんじらるのです。

 作家の言葉をたよりにもう一度この作品を読み直したくなるようないつまでも若々しい作品である。
 
 <冒頭>
  
 一章  友人たち
 
 ひとつの恐怖の時代を生きたフランスの哲学者の回想によれば、人間みなが遅すぎる救
助をまちこがれている恐怖の時代には、誰かひとり遥かな救いをもとめて叫び声をあげる
時、それを聞く者はみな、その叫びが自分自身の声でなかったかと、わが耳を疑うという
ことだ。

 <出版社のコピー>
 
 新しい言葉の創造によって”時代”が鼓舞される作品。
 そういう作品を発表し続けて来た文学者・大江健三郎の
 二十代後半の代表的長篇傑作『叫び声』。
 現代を生きる孤独な青春の”夢”と”挫折”を鋭く追求し、
 普遍の”青春の意味”と”青春の幻影”を描いた秀作。

  
 <お勧め度>
  ☆☆☆★ 

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