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空の怪物アグイー |
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| 新潮社文庫 | |||
| 定価:520円(税別) | |||
| 頁数:51頁(文庫版) | |||
| ISBN4-10-112607-0 | |||
| カバー画:山下菊二 | 初出:1964年1月号 『新潮』掲載 | ||
| 空から降りてくる・・・お化け赤んぼう・名前はアグイー | |||
| 銀行家の息子で28歳の作曲家D。彼は生まれたばかりの赤んぼうに死なれ、離婚をした。そしてウサギのようなお化けのようなものにとりつかれていた。大学生になったばかりの”ぼく”はアルバイトとしてその音楽家に付きそうというアルバイトを始めた。 Dの離婚した妻から、赤んぼうが生まれてから死ぬまでに一度だけ発した言葉が”アグイー”だったことを聞かされる。「わたしたちの赤んぼうは生まれたとき、頭がふたつある人間にみえるほどの大きい瘤(こぶ)が後頭部についていたのよ」 このあと大江作品に頻出する障がいを持った子供があられた初めての作品である。 大江の脂ののりきってきた時期、この頃のしなやかな文体でDという音楽家が魅力的に描かれている。作品の中に引用されている中原中也の詩も宗教的な雰囲気を醸し出している傑作。 |
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| <冒頭> | |||
| ぼくは自分の部屋に独りでいるとき、マンガ的だが黒い布で右眼にマスクをかけている。それは、ぼくの右側の眼が、外観はともかく実はほとんど見えないからだ。といって、まったく見えないのではない。したがって、ふたつの眼でこの世界を見ようとすると、明るく輝いて、くっきりしたひとつの世界に、もうひとつの、ほの暗く翳って、あいまいな世界が、ぴったりかさなってあらわれるのである。 |
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| <出版社のコピー> | |||
『個人的な体験』と同一の設定のもとにそれとは全く逆の結末を導き出し、共通のテーマをめぐる著者の文学的格闘をうかがわせる作品。 |
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| <お勧め度> | |||
| ☆☆☆☆★ 自選短編作品 | |||
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