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■大江健三郎略年譜

  
「罪のゆるし」のあお草
文藝春秋  
定価:1300円(税別) 販売中止
頁数:57頁
ISBN4-16-308250-6
初出:1984年9月号 雑誌『群像』
      短編集『いかに木を殺すか』7番目の作品 
   
<冒頭>
   昨年の春、家族みなでアラレの降りしきる谷間に帰省した。裏の座敷から川面をへだてた対岸の、いちいち記憶にきざまれている巨木に、落葉した雑木の斜面を、時をおいて白い闇にとざすアラレが降る。風景が再び明るくなった後、天井で音がするのは、瓦の隙間に入りこんでいたアラレがバラバラこぼれ落ちるのだと母親はいった。彼女はさきの秋に大病をした。この冬はしばしばアラレの通過を、そばだてた耳に聞いて夜をすごしたのだろう。
<出版社のコピー>
 「現代的でかつ芸術的」という批評が、若くして出発した僕の短篇への励ましだった。いましめくくりの時のはじめに、八つの短篇を書いて、そこに映る自分を見る。切実な時代の影に、個の生の苦渋のあとは見まがいがたいが、ユーモアの微光もまんべんなくある。
 思いがけないのは、女性的なものの力の色濃さだった。遠い幼年時の自分と、それほど遠くないはずに死、また「再生」を思う自分を結んでいる。知的な経験と、森のなかの谷間の神話を、懐かしく媒介しているのも女性的なものだ。(大江健三郎)



     想像力の大翼を駆って構築
     する洵爛たる小説宇宙


   四国の森のなかの谷間を舞台に、神話的伝承に支えられて
   森を防衛する勇敢な女たち。グロテスクな性、滑稽な性の
   饗宴と笑いにはじまり、優しさの極みに至る大江文学の傑作!

<おすすめ度>
☆☆☆☆

    
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