■大江健三郎 まずはこれから
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さようなら、私の本よ！
またまた大江健三郎がやってくれました。すばらしい三部作を出してくれました。この読み応えは大江作品ならでは。純文学の復興をめざして、あるいは21世紀文学の最初の傑作と呼ぶにふさわしい作品郡となりました。
聞きたくない、むしろ老人の愚行が聞きたい
不安と狂気に対する老人の恐怖心が
－ Ｔ・Ｓ・エリオット、西脇順三郎訳
序章 見よ、かれらは帰ってくる
Ⅰ
老人になりながら、それも暴力がらみの深手を負って初め入院した長江 古義人（ちょうこう こぎと）は、大病院の個室に顔を出す見舞客の思いがけなさに戸惑うことがあった。個人負担で、ベッドの底に退避
用の大型パイプを設置したかった。しかし、永年会うことがなく、近くそれがあると聞いても実
感のなかった椿繁（つばきしげる）の出現には、別の印象を受けた。積み重なるイザコザの記憶はそれとして、
古義人は懐かしい悦ばしさに満たされた。
国家の巨大亡録に対抗するため、
個の単位の暴力装置を作る繁と、
人類の崩れの「徴候」を書きとめる古義人 －
「おかしな二人組（スウード・カップル）」は静かに立ち向かう。
1月「むしろ老人の愚行が聞きたい
－ 『さようななら、私の本よ！』第一部」
6月「死んだ人たちの伝達は日をもって」
ー 『さようなら、私の本よ！』第二部
8月「われわれは静かに静かに
動き始めなければならない」
－ 『さようなら、私の本よ！』第三部