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2022年(令和4年)10月26日

 

 

 マイクロバス横転事故対応体験談(メキシコ)その3

 

 

 モルヒネが切れると激痛が襲います。「日本に帰ったら殺してやるー!」と怒鳴られたその瞬間から、次のメキシコ発JAL便(水曜日発で週一便のみ)には絶対に乗せないと大変なことになると恐怖が頭をよぎりました。しかし乗せるためには問題が2つありました。1つは7月という月は超繁忙期、メキシコ人の旅行客(出稼ぎを含め)だけで満員状態でした。何度も日本航空現地責任者に強力に請願しましたが4人の座席確保は難しいと云われてしまい、お先真っ暗の状況でした。当然、日本側でも交渉してくれてますが、すぐには席の確保はできません。もう1つの問題は、日本までの搬送時には乗り継ぎ地点のバンクーバー空港で怪我人にモルヒネ注射をしなければこの長時間の搭乗は維持できません。しかしバンクーバー空港に出かけ、注射をしてくれる医師は簡単には見つけられません。2つの問題を抱えながらも、ひとまずはメキシコシティに向かうためメリダ空港に急ぎました。メキシコシティ空港到着後はメキシコ大学の付属病院でJAL便搭乗日まで待機入院してもらいます。

 待機入院をして暫くしたときです、日本の上司から座席確保ができたとの連絡が届きました。やれやれ、何とか水曜日発JAL便に搭乗することができます。メキシコシティ国際空港へ向かう道中の車の中、お怪我をされたご本人から「君は船橋に住んでいるんだろう。だったら我が家は近いから、日本に帰ったらうちに遊びにいらっしゃい・・・」とやさしいお声を掛けていただきました。機嫌がよい時のお言葉とモルヒネが切れた時の「殺してやる・・・」との怒鳴り声の落差には驚ろくばかり。いかにお痛みがひどいのか思い知りました。

 JAL機内に入って設置されたストレッチャー(・・いや立派なベッド仕様)を見て、流石、日本航空だと感心しました。ビジネスクラスの数席を取り外し、他の旅客に排便・排尿などの匂いが届かないように距離を置くという配慮。しっかりとカーテンでのプライバシー確保もされていました。ちなみにメリダからのメキシコ国内便では機内後方のフロアーにそのまま担架を固定するだけの簡単なものでした。機体が揺れるたびにご本人は痛そうにされてました。

 ご家族の方もJALのこの対応を見てほっとしたご様子。しかし、まだ、バンクーバー国際空港でモルヒネを打ってくれる医者、看護師が見つかっていなかったのです。JTBバンクーバー支店より「ドクターは高額でしかも多忙。空港まで出張となると、来てくれるようなひとは簡単には見つけることができない」ときっぱりと云われていました。とうとうキシコを離れるときまでには解決できないままバンクーバーへ出発することになりました。勿論、ご家族にはこのことは話していません。そしてついに、バンクーバー空港に到着。私は目の前が真っ白で吐きそうな気持でした。飛行機から旅客は全員降りて我々しか残っていません。

 その時ですJTB社員と女性一人が搭乗口に現れました。医者ではありませんが、注射が打てる看護師が見つかったのです。神様ありがとう〜。

・・・次回に続く