2022年(令和4年)9月27日
マイクロバス横転事故対応体験談(メキシコ)その2
出発当日は成田空港のホリディインホテルで重傷者のお嬢様と待ち合わせをしました。ロサンゼルス経由でメキシコに向かいます。ノースウェスト航空はエコノミークラスの利用予定でした。あいにく機内はほぼ満席、しかも子供連れが多くうるさかったので、ダメもとで日本人アテンダントに事故のあらましを説明したところ、特別のご厚意によりビジネスクラスにアップグレードしてもらえました。事前にノースウエストの営業担当より空席があった場合にはグレードアップできるように計らいをしていてくれたのかもしれません。それまでお嬢様とはほとんど話らしいことはできてませんでしたが、ビジネスクラスになったことで少し打ち解けてくださったかと思われます。わたしは食事の時、飲み物としてのアルコールは不謹慎かと思い、やむを得ずミルクを注文しました。ところが出てきたのがビールでした。そこで、即座にキャビンアテンダントに”Not beer, I said milk(M.I.L.K)”と言ったところ、お嬢様から「ビール、お好きなんでしょう。無理をされずにお飲みになってください」と云われたのでした。ありがたくグッと一気に飲んでしまいました。これがきっかけとなり話し易くなりました。お嬢様は千葉銀行本社総務部勤務で落ち着いたさわやかな20代の方でした。緊急に事故対応で派遣された私の立場、旅行会社としての立場を理解していただいているようでしたので、本当に助かりました。もし、お嬢様が同行してくだされてなかったら現地での諸々の対応がスムーズにいかなかったのではないかと思います。
メリダ空港に到着したとき、ちょうど今回の事故に遭われた4名のお客様が日本へ向けての搭乗手続きをされているところでした。すぐに現地の旅行会社の代表に紹介してもらい、今回の事故についてお詫び申し上げました。しかし、全員が事故によるむち打ち症状のため、お辛い状況です。みなさん悲壮な顔で私をにらみつけられたまま、搭乗口に向かわれました。私は平身低頭、頭を下げるだけ。無事日本に戻られることをお祈りいたしました。
その後、私たちはメリダのホテルにチェックイン。翌日、病院に行きドクターから怪我の説明と日本までの担架移動時の注意事項を聞きました。コルセットで固定しているので担架移動時は固定箇所を絶対に動かさないように説明を受けました。現地での治療はあくまでも応急処置だけなので、早く日本に帰り、適切な手当てを受けていただかなければと焦ったのを思い出します。いずれにしてもモルヒネで激痛を抑えているだけです。モルヒネは常習性があるので抑制時間が徐々に短くなります(帰国時は6〜7時間間隔での投与になっていました)。病室に伺ったときは丁度モルヒネの効果が切れていて、激痛のため大声で叫んでおられたときでした。「私がJTB社員として帰国までお供させていただきます・・」とご挨拶した時が運悪くモルヒネが切れる瞬間だったのです。「日本に帰ったらお前を殺してやる〜!」と大声で怒鳴られてしまいました。同時に奥様は私を睨みつけられました。が、お嬢様は即座に「清水さんには責任はないでしょう!」と言い返してくださりました。ありがたいことでした。怪我をしたご本人は相当の痛みだったのだと思います。モルヒネが切れたら大変だ・・と痛感しました。