15 旅行会社の将来性
旅行会社は今大きく揺れています。大手旅行会社が脱”総合旅行業”宣言。インターネットを舞台とした異業種からの参入。運輸機関、宿泊業の直販。旅行会社離れの促進。静かに進んでいる業界再編性。旅行業に将来性はあるのでしょうか?就職して10年20年と働くことになるかもしれない旅行業の将来について考えて見ましょう。
売上額でこの10年の推移を見てみましょう。
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1992年 8兆4500億円
1993年 8兆
200億円
1994年 8兆5600億円
1995年 8兆4800億円
1996年 9兆9200億円
1997年 9兆8700億円
1998年 8兆7100億円
1999年 8兆5500億円
2000年 8兆5800億円
2001年 7兆9000億円
2002年 7兆5100億円
2003年 7兆1000億円 2004年 7兆3700億円
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(推定値) |
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一番売上高が多かったのは1996年でした。もう少しで10兆円に達するというところまで行きました。しかし、その後は旅行代金の激しい値下がり、世の中のデフレともあいまって2002年には96年比較で75%まで下がりました。4分の1の売上が消えてしまったということです。第三章で説明しましたとおり旅行業の収入は大半が手数料です。手数料というものは売上に比例します。収入面での旅行会社の厳しい状況がおわかりになるのではないかと思います。
ちなみに、“流通”という点、“小売”という点でよく比較される百貨店業界と比較をしてみましょう。百貨店業界も大手の“そごう”が倒産するなど大変厳しい業界であります。日本百貨店協会が発表している資料によりますと、協会に加盟している百貨店の売上が一番多かった年は1997年です。その年の売上額は9兆1900億円です。そして2002年が8兆3400億円。厳しい百貨店業界といえども最盛期の90%という踏ん張りをしています。これに比較しても、旅行業界の昨今の厳しい状況を理解できるのではないでしょうか。
旅行会社の将来性ということをこの7・8年の数値だけで見るならば、あまり期待できないということが言えます。このような状況を一番強く認識しているのは旅行会社そのものであって、今旅行会社は激しく自己変革をとげようと動き始めています。
2つの例をあげてみましょう。
これは近畿日本ツーリスが目指している方向です。ホームページには次のようにでています。
「宿泊・輸送の手配、発券を中心とした旧来型の旅行業から、プロデュース業という新しい旅行のビジネスモデルへの転換」を目指し、新たなフィールドへの挑戦を進めます。
「脱・総合旅行業〜プロデュースへの転換」への挑戦です。
イベント(Event)、コンベンション(Convention)、コングレス(Congress)から発生するビジネスを仕事の領域ととらえる。ECC事業への傾注。カスタマー・リレーションシップ・マネージメント(Customer Relationship Management)お客さまが旅先で求めている目的は何かを深く知り、研究し、商品化し、販売を徹底する。一人ひとりのお客さまとの関係づくりをより深めることにより、事業価値の最大化を目指す。
「創造型旅行業」への移行をめざしているJTBの方向性です。同じくホームページを見てみましょう。 「21
世紀のツーリズム発展の一翼を担い、内外にわたる人々の交流を通じて、平和で心豊かな社会の実現に貢献する。」これがJTBの企業理念です。ご存知のとおり旅行業としては世界ナンバーワンです。しかし、JTBの事業領域は既に旅行だけにとどまりません。旅行事業で蓄積したノウハウをもとに「広告・イベント・コンベンション」「金融・保険」「情報サービス」「物流」をはじめ、様々な分野に及びます。旅行という切り口だけでJTBをとらえるのではなく、「従来の旅行業の枠にとらわれず創造型旅行業として新し いビジネスモデルを創出している」ということも理解して下さい。
これは大いにあるといえます。ただし、従来の旅館の手配とか新幹線の切符を売っているというビジネスモデルを続けてゆけるところはないでしょう。新しいビジネスモデルを創造したところだけが生き残ってゆくでしょうが、それが「旅行会社」という言葉で表現できるものかどうか、はわかりません。おそらく10年か15年後には、全く様変わりしているでしょう。これから旅行会社に入ろうとしている方はその変化についてゆける人でないといけません。
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